大手で学んだコーヒーの最先端
柴田さん:学校卒業後は洋服屋に勤めていましたが、30歳のときに米資の大手コーヒーチェーン店の求人募集を見つけ入社しました。全国展開に足をかけ始め社内に勢いがあった時期です。ここでの経験が、スペシャルティコーヒーを自分で提供しようというステップアップにつながったので、感謝しています。
その大手チェーン店は、僕なりに言うと「顧客主義」です。お客さんを大事にしファンになってもらい、繰り返し来店してもらうことが、結果として売上につながります。そこでは接客マニュアルよりも、お店の歴史や運営する思いなどを研修で教え、あとは現場の判断で接客します。「いらっしゃいませ」よりも「こんにちは」。お客さまとお店を隔てない文化がありました。
ここの仕事で、単にコーヒーを楽しむ立場から、お客さんへ提供する側へ変わり、自分なりにも社内外のセミナーでコーヒーの勉強をしました。今は一般的な言葉ですが「スペシャルティコーヒー」という単語が広まり始めた時期で、いち早く良い物を取り込んで頑張っている人たちを知ることができました。そのチェーン店は今の僕から見てもすごく良い豆を使っていました。ただ、米本国の集中工場で焙煎したものを日本に持ち込んでいたため、鮮度という点ではどうしてもデメリットがあります。また、個人店でも最高のコーヒーを提供しようと頑張っている存在を知り、「それなら自分でも」と開業を考え始めました。結局、社員として7年ほど勤め、それから5年ほどは開業の準備期間でした。
フード持ち込みOK!?新丸子で愛される店づくり
柴田さん:シバコーヒーでは当初僕一人で焙煎も接客もしており、ケーキなどを作る余裕がありませんでした。冷凍モノも頭をよぎりましたが、コーヒーが最高の味を目指しているのにケーキが冷凍ではバランスが悪いです。それなら、コーヒーを楽しむためのフード類は、どうぞ自由にお持ちください、と割り切りました。ちょうど新丸子駅周辺はイートインスペースが無いパン屋さんが増えていたので、そうしたお店がお客さんに、パンを持って行って食べられるコーヒー屋があるよ、と伝えてくださるのは助かっています。
大手にいたとはいえシバコーヒーを10とか20店舗にするつもりは毛頭ありません。まず新丸子の中で、僕が死ぬまで何十年間も愛されるお店にしたいです。オープンして3年半ですが、お客さんはほぼ近隣の方です。隣駅の武蔵小杉にタワーマンションが建ち始めましたが、新丸子はまだまだ下町感が漂っています。このあたりは焙煎店が少ないので、2駅程度でしたらわざわざ自転車で来てくださる方もいます。まずは、新丸子駅を中心に半径2キロぐらいの範囲で足元を固めたいです。その中でチャンスがあれば、店舗を増やしたり、移転して拡大することもあるでしょうが、今はしっかり足元を固めるという段階ですね。地元をベースにするという姿勢は変えたくありません。
お客さまの中には、今度パン教室をやるからパンに合うコーヒーを出して欲しいと声をかけてくれたり、お店のテーブルでワークショップを開きたいと相談してくれる方もいます。地域密着という思いの中では、豆の販売店という役割だけでなく、街のコミュニケーションスペースとして広まっているのはありがたいです。
美味しいコーヒーを楽しむ人を増やしたい
柴田さん:将来的な目標としては、本当に美味しいコーヒーを楽しむ人を増やしたいです。また、それを提供する側の人も育てたい、という思いが強く湧いています。いま日本は空前のコーヒーブームです。コンビニのコーヒーが10億杯以上売れる時代だけれども、僕から言わせてもらえば美味しいコーヒーはそれほど多くありません。本当に美味しいコーヒーを知ってもらい、その上でお客さんに選んでもらいたいです。美味しいコーヒーを知らずに、「コーヒーの味ってこんなもんだ」とあっては残念です。せめて、「シバコーヒーは美味しいけど500円は高いじゃん。コンビニなら100円で飲めるんだからそれでいいよ」という判断をしてもらいたい。そのためには、美味しいコーヒーを飲める場所を増やしていく必要があり、同じ考えでコーヒーを焙煎して抽出できるプロを育てたいです。
また、家庭でもっと手軽に楽しめるようにしたいですね。コーヒーを美味しく淹れたい人が本を数冊読んだり、インターネットで動画をいくつか見ても、抽出時間やお湯の温度もそれぞれのお店流のやり方が書かれていてバラバラなんですよね。どれが正しいのかわからなくなります。そこでうちののコーヒーセミナーでは、お湯の温度1つとっても「なぜ83℃を勧める方法があるのか、そしてなぜシバコーヒーでは93℃を勧めるのか」という説明をし納得してもらい、あとはお客さん自身で選択してもらうようにしています。お客さんが自分の家で抽出の過程まで楽しんでもらいたくて教室を始めました。それは、自分がコーヒーへの興味が高まり本格的に勉強して行く中で、そうしたセミナーをして教えてくれた先輩や恩師がいたからです。自分がプロになったいまは、美味しいコーヒーを淹れる人を育てたいと強く思っています。
お連れ様同士で来た場合は、シェアできるように必ず2つのカップに分けて出しています。いろいろ味わってもらい、自分の好きな味を見つけてほしいという思いがあってこそのサービスです。いただいた新丸子ブレンド(500円)はシバコーヒーのスタンダードな味。豆の専門的な話よりも「ホットコーヒー」を飲みたい人もいるため、ブレンドを頼まれたらまずはコレ。またブラックが苦手な人にもまずは楽しんでもらいたい味。
個人店こそのぼり旗を活用
柴田さん:デザインのぼりショップを使ってみようと思ったのは、デザイン性の部分ですね。コーヒー業者のカタログに掲載されているのぼり旗はかっこ悪いのが多いです。個人的にチチテープ仕様が好きじゃないというのもありまして、袋縫い仕様を選べてよかったです。
大手チェーン店では、大判のポスターを時間帯によって付け替えるなどビジュアルを意識したマーチャンダイジングを行えますが、個人店では大掛かりな広告を実施するのは困難です。その点のぼり旗は、手軽に設置ができ、お客さまの目を飽きさせない施策を行えるので良いですね。
最初は、3本立てられるスペースがあるか不安でした。でもやってみたら、やっぱり3本立てて正解でしたね。お客さんが来たときにパッと
目に入ってくる印象が違います。遠くから見ても、1本だけとは違います。自分の訴えたいことがいろいろあると、ついバラバラの内容ののぼり旗を立てたくなる気持ちもすごくわかります。でも自分で経験して思いますが、それはやっぱりダメなんです。目に飛び込んでくるメッセージはひとつのほうがいいんですよ。
シバコーヒーからお客さんへのDMやチラシなどの施策は、いまのところまだできていません。ぜひやりたいし、やらないといけない部分です。デザインのぼりショップから手書きのハガキが届きますが、そういったところを真似させてください(笑)。
(DNSニュースレターvol.7 2015/11/20発行分より抜粋)
SHIBACOFFEE
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